19.先輩のいない日常。

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「だって生徒会は四月で引き継がれるんだろ? だったら二年生もあと少しで終わりじゃん」 「あー、ほんとだ。そうなるよな」  ……うん、たしかにその通りだ。てことは、夏樹先輩とも頻繁に会えなくなる……  ……ちょっと寂しくなるなぁ。 「…………え?」  俺、今なんて……  先輩と会えなくなるのが寂しいって? 「矢野? どうした?」  鳥羽の声にハッとする。 「あ……な、なんでも、ない……」  あからさまに動揺する俺を見て、当然不審に思ったのか。 「なんでもないってわりには見えないけど」 「そうそう。だってなんか顔赤いし」  ……顔、赤い……っ! 「ききききっ、気のせいじゃない?!」  ──ピコンッ 「あ、矢野のスマホじゃね?」  柳木が俺のスマホを指さすから、視線はそこへ落ちる。 「それにしてもさぁ──…」  柳木と鳥羽は、話に夢中で俺のことなんかほったらかし。  よかった、助かった……。  でも、こんな時間に誰だろう。 【夏樹先輩:メッセージ一件】  えっ、うそ……。先輩から? なんだろう……。 【そっち今授業中?俺ら班で自由行動してるところ】  メッセージと一緒に写真が送られる。  その写真を見て、思わず頬が緩む。 【今、休み時間です。修学旅行楽しそうでよかったです】  先輩の顔を見ると、なぜか不思議と安心してしまう。 【楽しいよ。すげー楽しい】  ひとつメッセージが送られていると、またピコンッと音が鳴る。 【でも、矢野くんに会えないの残念】  その言葉を見て、わずかに動揺していると、またメッセージが送られてくる。 【会えないかわりに少しだけ声聞きたい】  休み時間は残り五分。  だけど、俺は──。 「ごめん、ちょっと席外すね」  友達に断りを入れてから廊下を出る。 【いいですよ】  メッセージを送ると、すぐに着信が鳴った。  俺は緊張しながら画面をタップする。 「も、もしもし……」 『あ、矢野くんの声だ』  機械越しに聞こえる先輩の声は、いつもと変わらず柔らかくて優しい声だ。 『休み時間にゆっくりしてたところ急に無理言ってごめんね』  先輩に謝らせたくなくて、 「いえ、全然大丈夫です!」  と即座に答えた。 『今までほぼ毎日会ってたからさあ、急に会えなくなるとなんかちょっと調子狂うっていうか、矢野くんの声聞きたいなって思っちゃって。でも、声聞いたら今度は会いたくなっちゃった』
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