20.伝えたい想い

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20.伝えたい想い

 先輩たちが修学旅行から帰ってきた翌日は、生徒会室にはたくさんのお土産が置かれていた。 「こっちは俺から。で、そっちは夏樹と武田から」  会長がテキパキと説明をしていく。後輩である俺たちは、「ありがとうございます」と口を揃えた。 「感謝しろよー」  武田先輩がそう言って後輩に絡むのを見て俺は思わず苦笑い。  それにしても、夏樹先輩がいない。  椅子から立ち上がり、会長の元へ向かう。 「あの、夏樹先輩って……」 「ん? ああ、夏樹ね。今、忘れ物を取りに教室に行ってるよ。何か用事でもあった?」 「用事ってほどでもないんですけど……」 「じゃあ、夏樹のこと呼びに行ってもらっていい? ついでに生徒会メンバー分のジュース買ってきてほしいんだ」  と、会長は俺に千円札を手渡しながら、「夏樹、二年四組だから」と続けた。  やっぱり会長はどこまでも抜かりがない。  生徒会室を出て先輩の教室に向かう。  ──『修学旅行が終わったら話したいことがあります』  そう言ったけれど、なかなかタイミングが合わない。生徒会室では絶対に無理だし、かと言って帰り道にサラッと言うのもなんか違うし。  考えていると、先輩の教室の前にたどり着く。中を覗くと、夏樹先輩が机に軽く腰掛けている後ろ姿が見えた。  何か考えてる……? 「……夏樹先輩」  恐る恐る声をかけると、振り返った先輩は、「あ、矢野くん」と笑った。 「どうしたの?」 「会長におつかいを頼まれたので、そのついでに様子見に来てみました。忘れ物は見つかりましたか?」 「うん、見つかったよ」  先輩は立ち上がろうとはしない。  俺はそうっと教室の中に足を踏み入れる。 「そうだ。矢野くんにお土産があるんだ」  そう言って鞄から取り出して「はい」と手渡される。 「色々見てみたんだけどどれがいいか分からなくなって。で、最後に見たそれがなんか雰囲気が矢野くんっぽくて」  見てみると、小さな猫のキャラクターもののキーホルダーだった。
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