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「うん。それだよ。持ってきてくれてありがとう。」
昌大はそういうとリビングの隅に置いてある棚に向かい、中から小箱を取り出す。中身は見なくてもわかる。私が半返しであげたアメジストが入ったネクタイピンだ。偶然にも昌大が指輪を買った店の向かいの店で買ったことをよく覚えている。お互いに取り出した小箱を開け、リビングの真ん中にあるテーブルに置いた。これを見るのは梓から離婚するよう脅しを受けたあの日以来だ。
「…これがどうしたの?」
「これをお互いに返そうと提案したいんだ」
結婚を決めた時に買う婚約指輪。それを返すということはつまり、私達は結婚しなかったものとして生きていこう。そういう意味だ。
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