第22話

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「これからもよろしくね。河山 まりさん。」 「そうね。幸せな結婚生活を過ごそうね。」 「うん。もちろん。」 それから俺たちはすぐに結婚の準備をはじめた。両家の顔合わせだとか、2人揃って役所に届けを出しに行くだとか、普段やらない事ばかりで少々くたびれたが、これからの幸せな日々を思うと乗り切れた。まりの希望で結婚式を挙げることになったが、これが平穏な日常前最後のビッグイベントだと思うと、せっかくだし楽しもうと素直に思えた。そして結婚式当日。俺とまりは隣同士で、照れ臭く目を合わせたりはせず、時折会話をしていた。 「私、今とっても幸せ。この幸せを忘れたくないな。」 「うん。ずっと大切にしていようね。」 この時は俺とまりは同じ方向を向いていると思っていた。俺も幸せな日常を願っていた。しかし今思うと、この次のまりの言葉から、既にすれ違いは始まっていたのだろう。 「そうね。ずっと大切にするなら、記念日は大事ね。」 俺は結婚して以降は記念日といっても日頃の感謝の言葉を伝える程度で、大袈裟な事はやらなくていいと思っていた。しかしまりは年に一度、特別な事を期待しているのだと、そう思った。正直少し重荷に感じたが、年に一度のことだし、なにより今は一生に一度の結婚式の最中だ。俺は許容し、こう返した。 「そうだね。」
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