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真海要
真海要
「ああ、テスト嫌だな~」
もうすぐ学期末テスト。
前のテストでかなり悪い点だったから、今回もそうなるとさすがにスマホをとられるかもしれない。
一応自分でもやばいと思っているのだが、どうしても勉強をする気にはならなかった。
―学校―
「ねえねえ、慧君かっこよくない?」
「うんうん。わかるよ~」
「あ、こっち向いた!手ふっとこ!」
慧君は学校の人気者だ。勉強もできて、スポーツもできる。人気者になるのは当たり前か。
私はその人気者の慧君の幼馴染なんだよね。なんでだろ。
慧「おい」
慧「おい、要。本当に勉強大丈夫か?」
私「大丈夫…(じゃない)」
慧「本当か?」
私「どうでもいいでしょ…」
[何あの子、慧様と話してる。]
あーあ。こんなことなら学校休んじゃおうかな。
「ねぇ、ナヤミヤって知ってる?」
「うん、知ってるよ。その店に来た人の願いをかなえる代わりに、魂をとるんでしょ?」
「そうなの?私は体の一部をとるって聞いたけど…」
ふーん。そんなものがあるんだ。ま、私には関係ないけど。
―放課後―
はぁ。テストどうしよう。
そんなことを考えていたら、いつの間にか学校は終わっていた。
帰りながらもテストのことを考えて歩いていた。
家に帰るとお母さんにお使いを頼まれた。
「もう!買い物ぐらい自分で行ってよ!」
ぶつぶつ呟いて歩いていた。
無事に買い物を終えた。
そうだ! 帰り道にコッソリカフェに行こう!
「寄り道寄り道~♪」
あれ?
こんなところにお店ってあったっけ?
すんごい古風なお店。でも、なんか魅力的だな。
「名前は なになに、『悩み屋』」
ん? これって学校で話してたお店だよね。
確か…
『その店に来た人の願いをかなえる代わりに、魂をとるんでしょ? 私は体の一部をとるって聞いたけど…』
………え、やばくね?
「…よし。戻ろう」
もと来た道を戻ったはずなのに、何回も店の前に戻ってきてしまう。
「え…?」
どうしよう。家に帰りたいのに。
しょうがない、お店の人に聞くか。
――カランカラン
気持ちのいい鐘の音色。
「いらっしゃいませ。悩めるお客様。 どうぞお席へ」
中に入ると同時に声が聞こえてきた。
私は慌てて、
「いいえ!道に迷っちゃって…道を教えてほしくて…」
しどろもどろで話しながら奥のほうを見ると、
「とにかく、どうぞお席へ」
と、言ったのは綺麗な女の人。
私は言われるがままに一つしかないカウンターの席に座った。
「あの…」
「改めまして、いらっしゃいませ。私はこの店のオーナーをやっている死闇嘉灘と申します。どうぞお見知りおきを」
「あの…嘉灘さん。私は「あなたはテストについて悩んでいますね?」
え?
この人、なんで私がテストについて悩んでいることを知っているの?
頭の中が「?」でいっぱいになる。
「はい…?」
「そんなお客様にはこちらがよろしいようで」
と、私の大好きなキウイがのった綺麗なパフェをテーブルに置いた。
やった!と思ってスプーンで食べようとして思いとどまった。
私お金持ってないじゃん。
「出してもらったのに、すいません。私、お金持ってないんです」
と、言うと
「いえいえ。それはもうすでに、お支払いいただいてます」
?
「先ほど私の質問に頷きましたよね」
うん。
確かに私は『テストについて悩んでいますね?』という質問に頷いた。
「私の商売は人の悩みを買い取ること。悩みを買い取る代わりにこのようなサービスをさせたいただいてます」
なるほど?
まーいっか。
―――――――――――――――――――――――――――――
私が食べ終わるのを見計らって嘉灘さんが話しかけてきた。
「あなたのすぐそばに手を差し伸べてくれる人がいます。その手に気づけたら、あなたの悩みも晴れるでしょう」
「またのご利用をお待ちしております。要様」
!
「なんで私の名前を!…
言えなかった。言い終わる前に、すべてがもやもやして白に染まっていった。
でも、最後に、嘉灘さんが
「『テストの悩み』解決しますように」
といったのが聞こえた――――
―――気がした。
気がつくと、家の前についていた。
何だったのだろう。
「夢だったのかな…」
でも口の中にはあの、甘いキウイの味が残っていた。
―次の日―
「行ってきます」
[キャー慧君だ~]
慧「うるさい。どっか行け」
要「慧君ちょっといい?」
[~でさ。マジで~の。笑えるんだけど]
[慧~?聞いてる~?]
慧「ん。聞いてる。ちょっと待ってて」
慧は、一緒にいた男子生徒に声をかけるとこっちへやってきた。
慧「どうした」
要「……やっぱり勉強教えてください」
慧「ははっ(笑)やっぱりそう来ると思ったよ」
要「ずっと変な風に無視しててごめんね」
慧「別に。わかってたから」
要「……」
ありがと。
そう言ったら、慧君は笑っていた。そして、
どういたしまして。
思わず私も笑ってしまっていた。
―――――――――――――――――――――――――――――
―テストが終わって数日後―
要「……」
父「………なんでこんないい点がとれたんだ」
数秒の間。
要「慧君に教えてもらったから」
父「…………今の間はなんだ」
要「別に」
父「だが、まあいいとしよう。頑張ったな」
要「そりゃどうも」
父「…」
テスト終わった。
凄い!とはいかないけど、いい点数だった。
要「ありがとう。嘉灘さん」
―――――――――――――――――――――――――
嘉灘「ふふっどうやら、あの子は差し伸べられた手に気づいたようね」
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