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城の周りを掃除する使用人たち。
「あー、嫌になる!こんな広い城の周りの掃除なんて。」
「本当に!枯れ葉がこんな!」
「動物の糞も山の様で、特に最近は多いのよ!」
更に崩落した橋を復旧する者達。
「あぁ、こんな派手に壊して!」
「街を守るためとはいえ、これでは働かされて、守られてるのか、こき使われているのかわからないよ!」
更に街で暮らす平民たち。
「なんてこった。こんなに税を上げられたらやってられないよ。」
「あの殿様は本当に自由奔放で、また遊郭で遊んでいるらしい。」
「いいなー、あんな立派なお城に住んで好き勝手して。」
「まあ、戦が起きて負けないで平和でいるだけありがたいが…これではなぁ。」
そんな不平不満など、なんのその。大和殿様は相変わらずの豪遊っぷりを見せている。
そして今日も遊郭に向かう。
遊郭には出入り口は一つしかない。その遊郭の入り口で奇妙な人を見かける。
「おや?」
「どうした蒼大庄?」
「いえ、あの娘は?」
入り口の前で見たことない女性が立っている。ここの遊郭では借金を背負った者、身寄りの無い者、人身売買された者、とにかくたくさんの人が来る。そういう者は決まって目や心の奥が怯え、弱り、時には死んでいる者もいる。
しかしその女性は何とも優美だ。
蒼大庄も大和殿もその女性を思わず見てしまう。そして自然と足は止まる。銀の髪にしっとりと赤い火の様な口元。瞳の輝きは月を思わせる。その奥は何かを隠し持つ様な不思議な魅力までもそれに近いだろう。
その美女は何も言わず殿を見つめていた。
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