傾城

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「…ほほほ、よいよい、新しい遊女かな?」 大和殿は鼻の下を伸ばして美女に近づく。しかし美女はある一線から殿と同じ距離を保つ様に後ろに下がる。 「ぬははっ。よいぞ!それくらいの品や度胸がないと遊びがいもない。わしは、この蛇城の殿、大和案山子様だ!ここも『馴染み』だ!…どれ?わしを楽しませてくれんかな?」 美女は何も言葉を発することなく遊郭の中へ誘う様に入っていく。 フラフラとつられて入っていく殿を蒼大庄が止める。 「殿!あの女は少し危険な匂いがします。」  「あー?」 「なんというか、生気を感じられません!…あやかしの類かも…。」 「ええい、黙れ黙れ!それも触れれば分かる事だ!」 大和は蒼大庄の言う事などまるで聞いていない。 そしてまた多くの遊女と豪遊をする。 しかし、その中にあの美女が隅に。 「おお!そち!こちらへ来い!」 しかし美女は首を横に振る。 「ぬははっ、それではこれでどうだ?」 殿は小判を積んでみせる。すると美女は一歩前に。小判を積むに合わせて美女は一歩ずつ殿へ近づく。 そんな様子を蒼大庄は不思議そうに見ているし、周りの遊女達もなんだかざわついている。 「…あの遊女は?」 「いえ、私どもは存じ上げないですわ。」 「…。」 蒼大庄は美女の後ろ姿を睨みつけている。 美女は殿の隣まで来る。目の前には格の高い花魁でも見ないような金銭が積まれている。 肌ける着物からは白い肌が殿を誘う。手をついて耳元へあの麗しき口元が。殿に触れる寸前だ。 「ぬははあ!どうだ?どうだ?床の方は??」 「……。」 美女はとろける様な瞳で口を少し動かす。 「…ぬはは、か。」 殿は頷いている。殿は女性の周期についても理解がある様で、その周期を少し理解したようだ。 「そうかそうか、ならば明日にでも! …おい!この娘を身請けする!」 「!?」 殿の言葉に周囲が目を丸くする。『身請け』というのは女性を買い取る事になる。通常はその女性の親に承諾を得て、その遊女が背負っている借金なども肩代わり。相当な金額と手間が必要だ。 美女は直ぐ様何やら書類を。 「…身請け…5000両。」 「5000両!殿!それは高すぎです!」 「うるさい!わしに指図をするな!」 蒼大庄の言葉を聞かない殿。殿に美女は身を委ね、頭や首をすりつける。それはまるで獣が自分の臭いをつけるようだ。 そのまま美女は殿の女性となった。
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