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美女の身請けをした事で城の金銭事情は厳しくなる。
「なんで!こんなに城の中や周りの掃除をしてるのに金銭を減らされないと行けないの!糞は増えているのに!」
使用人も愚痴が止まらない。
そんな時にも殿は美女と楽しむ。
周りの事なども気にしない程に。
殿の耳には誰の言葉も入らない。
それどころか美女には誰もにも触れさせない様に、部屋の奥へ幽閉させてしまうほど徹底してしまう。
更に城には不穏な話が。蛙城が犬城と手を組んだという話も。
それでも殿は対策の一つも取らない。
美女との時間をひたすらに楽しむだけだ。
そんな日々が続いた夜。
殿が幽閉しているはずの美女が何故が部屋を出て通路に。
そこに立ち会わせたのは蒼大庄だ。
「!?」
「…お前は…何者だ?」
「…。」
「…殿に近づいて何が狙いだ?」
「…。」
「…何故…喋らない。」
「…。」
蒼大庄の言葉に美女はその深い深い瞳で見つめて返す。蒼大庄は目を閉じて一つ息を溢した。腰にある刀を抜く。
「…やはり…妖かしの類だな。」
蒼大庄は目をカッと見開く。
「なぜ…突如現れたのか?人の言葉を話せないのも…。人ならざる者だからだな!」
蒼大庄は一閃。刀が空を切る。美女は直ぐに角に消える。蒼大庄は追いかける様に角を曲がる。
すると入れ替わる様に狐が蒼大庄の足元を駆け抜けていく。
「!?…狐!?」
蒼大庄は角を確認して誰もいないので狐を走って追いかけていく。
「何事だ…?」
殿は騒ぎを聞いて目を覚ました。
「殿!?あの美女は化けぎつねです!」
「あぁ?お前は何を言っている!?」
蒼大庄と殿が揉めている。その間に狐は城を出て行った。その様子を複数の町人が見ていた。
そして、城に日が昇った。
その時に城の中にあった金銭が一銭も無くなっていた。
「…そんな…何故だ…あの美女は…。」
殿は正に狐につままれている。
城に金銭が無くなり、殿の力も無くなり、大きな勢力を抱えた蛇城は崩れてしまったのだ。
妖かしによる、正に「傾城」というところだった。
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