7/7
前へ
/25ページ
次へ
「隆行……あの日のココアは本当に嬉しかったよ。他にもたくさん……とにかく、思いやりはしっかり伝わってるから安心して」 「明日香……」  沈黙が流れる。洋楽が流れる店内に、客の姿はない。店員も一向に注文を取りにくる様子がない。 「明日香はコロナ陰性だったんだよね?」 「うん……だからキスできるよ」  勇気を振り絞った明日香の言葉が、全身に染み渡る。 「ホ、ホント? じゃあいただきます」  明日香と口づけを交わそうとした時。カランコロンと入店を知らせる鈴が鳴った。 「ざんねーん! ドアが開きましたー!」  おどけて距離を取り、ころころと笑う明日香。その顔を見て、心から氷のように溶けていった。  不安という降り積もった文字が。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加