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「隆行……あの日のココアは本当に嬉しかったよ。他にもたくさん……とにかく、思いやりはしっかり伝わってるから安心して」
「明日香……」
沈黙が流れる。洋楽が流れる店内に、客の姿はない。店員も一向に注文を取りにくる様子がない。
「明日香はコロナ陰性だったんだよね?」
「うん……だからキスできるよ」
勇気を振り絞った明日香の言葉が、全身に染み渡る。
「ホ、ホント? じゃあいただきます」
明日香と口づけを交わそうとした時。カランコロンと入店を知らせる鈴が鳴った。
「ざんねーん! ドアが開きましたー!」
おどけて距離を取り、ころころと笑う明日香。その顔を見て、心から氷のように溶けていった。
不安という降り積もった文字が。
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