降りつもる不安

一

　ピコリーン！

　車内に軽快なメロディーが響いた。白昼夢へ歩き出した意識が連れ戻される。

　メールの着信音だ。ポケットからスマートフォンを取り出す。画面の時刻は九時五十分と表示されていた。

　なにぃ？　いつの間に未来へ来た？

　なんてことだ、眠っていたのか。慌ててメールを開く。

「おはよ。今から行くね」

　明日香からだ。いつも通り簡素なメール。

「おはよ！　今日も寒いね。了解だよ。気をつけてきてね」

　一分半後に返信を送る。早ければガツガツしていると思われ、遅いと不安をかきたてる。恋愛心理学の教えを忠実に守る。

　スマホを胸ポケットにしまい天井を仰ぐ……不安という豪雪が心臓へしんしんと降りつもる。明日香と会うのは楽しみなのだが。