アジュガ

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アジュガ

リリーは、妹のジニアと共に、祖父のアジュガと三人で暮らしていた。 三人が暮らしている家は、普通の家では無かった。 海に長く突き出た、岬の岩の上に有る、見張り所と呼ばれる、古い要塞だった 漁師だった父は、ジニアが生れた年に、海の事故で死んでしまい 母も、リリーが10歳、ジニアが5歳の時に、流行り病で、あっけなく死んだ。 それからは、祖父のアジュガが、誰も住む人が居ない、この要塞で 二人を育ててくれたのだ。 アジュガは、山へ行き、薪になる木を拾って来る。 ついでに、食べられる野草や、木の実も採って来てくれる。 リリーは、海に潜って魚を突いたり、ジニアと一緒に、魚を釣ったり 入り江に打ち上げられる、流木を拾ったりと、楽しい毎日を送っていた。 だが、貧しくて、パンが買えない時も多かった。 それで、12歳になったリリーは、岬をぐるりと回った先に有る ガザという街の食堂で、働かせて貰う事にした。 まだ小さいので、昼時の、一番忙しい時だけと言う約束で 料理の下ごしらえや、盛り付け、皿洗い等、仕事は多かったが 泣き言ひとつ言わず、せっせと働く。 「良く働くね~」食堂の女将さんは、すっかり、リリーが気に入って 客が途絶えると「今のうちに、食事を取ろう」と、賄を振舞ってくれる。 「美味しい!!このスープ、何で、こんなに美味しいの?」 「それはね、この出汁を使っているからさ」女将さんは、何でも教えてくれる その女将さんがくれる賃金で、何とかパンだけは、買えるようになった。 一年経つと、リリーは、すっかり大人並みに働けるようになり 女将さんも、作る料理を任せる様になった。 そんなある日、珍しく三人の家に、来客が有った。 「エルダー小母さん!!いらっしゃい」「リリー、随分背が伸びたね~」 そのリリーの後ろで、恥ずかしそうに、顔を出すジニアに 「ジニア!!相変わらず、甘えん坊さんだね」と、その頭を撫で 「小父さん、お久しぶりです」と、アジュガにも、挨拶する。 「三年ぶりか、久しいな~カメリアは、元気か?」 「それが、、もう、足腰が立たず、寝たきりになってしまって、、、」 「そうか、それで、なかなか来れなかったのか」「はい」 「わしも、暇を見つけて、会いに行けると良いのだが、、」 「是非、来てやって下さい、喜びます」そう言ったエルダーは 手提げの中から、リリーとジニアの洋服を、取り出し「着てごらん」と言う 「わぁ~新しい洋服だ~小母ちゃん、有難う!!」 二人は、大喜びで、服を着たが、服も、ズボンも、少し大きく 袖や、足元は、折り返さなければならなかった。 「やっぱり大きかったか、小さくて、着れないよりは良いと思ったんだが」 エルダーはそう言うと「針と糸を、持っておいで」と、リリーに言い 手提げの底から、細い紐を取り出した。 エルダーは、折り返した部分を縫い、その中へ紐を通して 「こうやって引っ張れば、袖口も、足首も、おかしく無いだろ?」と、言う 二人は、もう一度着て見せ「わ~凄い!!これなら、海の浅瀬位なら 歩けるよね」と、燥ぎながら言う。 「いつも、すまんな~」アジュガは、紅茶を淹れ、勧め乍ら礼を言う。 「いいえ、私には、子供が居ないから、この二人が、まるで、子供みたいで」 エルダーは、目を細めて、二人を見ながら言った。
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