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二人は、賑やかな街の中を通って行く。
初めてガザに来たジニアは、大きな建物や、珍しい物で一杯の街に
目を奪われ、きょろきょろして、なかなか足が進まない。
「ジニア、早く山を越さないと、夕方になっちゃうよ」
リリーは、ジニアを急かして、山道へ入った。
暫く歩いて行くと、道が細くなった「あれ?この道で良いのかな?」と
辺りを見回したが、道は続いていたが、木が生い茂っているので
この先が、どうなっているのかは、良く分からなかった。
このまま進んで良いのか、元の少し広めの道まで戻った方が良いのか
考えているリリーの耳に、コーン、コーンと言う、木を切る音が聞こえて来た
「人が居る、ジニア、ちょっとここで待ってて、道を聞いて来るから」
リリーは、ジニアに、自分の荷物を預け、音のする方へ行って見た。
高い木の上で、枝を切っている、きこりが居た。
「小父さ~ん」リリーは、上を向いて、大きな声で呼んだ。
「何だい、お嬢ちゃん」きこりは、いきなり現れた、女の子に驚きながらも
優しい声で、そう言った。
「道が分からなくなったの、あの道を、進んでも良いの?」
リリーが、ジニアを置いてきた方向を指差すと
「ああ、あれは獣道だから、駄目だよ、本道は、戻って右側を、真っすぐだ」
と、教えてくれ、登っている木を、大きく揺すって、隣りの木に飛び移った。
「わぁ~凄~い」リリーは、きこりの技に、目を瞠ったが
「小父さん、有難う」と、お礼を言って、元へ戻る、そのリリーの耳に
「駄目よ、持って行っちゃ駄目っ」と言う、ジニアの叫び声が聞こえた。
何事かと、駆けだしたリリーの目に、背の高い、黒づくめの男の姿が見えた。
その男は、追いすがるジニアに向かうと、片手を上げた。
「あっ」リリーは、目を疑った、ジニアの姿が、一瞬で木に変わったからだ。
「ジニア、ジニアっ」リリーは、夢中で、木になったジニアに駆け寄った。
「ジニアっ、しっかりしてっ」と、抱きしめたが
ジニアの柔らかな肌は、固い木の皮に変わっていた。
「何て事をするのよっ」リリーは、涙の顔で振り返って
男にそう言ったが、もう、男の姿は、そこには無かった。
「どこっ、どこよっ、ジニアを元に戻して、戻して~っ」
リリーは叫びながら、男が去ったであろう方向へ、駆けだした。
だが、その先の道は、二手に分かれている、どっちに行ったのだろう?
リリーが焦っていると、「どうしたんだい、そんなに急いで」
そう言ったのは、木から降りて来た、あのきこりだった。
「小父さん、黒い男、どっちに行ったか、知りませんか?」
そう聞くリリーに「あっちへ行ったけど、もう、追いつかないぞ
普通の人間の歩く速さじゃ、無かったからな」と、言う。
そして、涙だらけの顔のリリーを見て「何か有ったのか?」と、聞いた。
リリーは、妹が、あの男に、木にされたと、訴えた。
「木に?本当か?」きこりは、信じられ無いと言う顔で聞く。
「はい」リリーも、信じられ無い気持ちは、同じだった。
流れる涙を拭きながら、リリーは、きこりをジニアの所へ連れて行った。
「これが、、妹さん?」「はい」まだ小さい、その木を撫でた、きこりは
「松の木に、されたのか、、」と、枝に引っかかっている
ジニアのリュックを、取ってくれた。
「ジニア~」そのリュックを抱きしめて、リリーは、大声を上げて泣いた。
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