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翌朝、起きて来たリリーに、朝食を取らせると
カメリアは、自分の部屋に呼び「一つだけ、魔法を教えてあげるよ」
と、言い「良いかい、気持ちを集中させて、この傷が治るようにと願うんだ」
と、自分の腕に有る、切れたばかりの、浅い傷口を見せた。
「この傷、どうしたんですか?」リリーが驚いて聞くと
「そんな事は良いから、ほら、うんと気持ちを集中させるんだよ。
もっと、もっと、もっと強く!!傷よ治れと、一心に思うんだ」
リリーは言われた通り、他の事は何も考えず
ただ傷が治る様にと、気持ちを集中させて願った。
すると、カメリアの腕の傷が、すっかり塞がり、綺麗に治ってしまった。
「出来た!!」リリーが信じられ無いと、治った傷跡を見て言うと
「今の気持ちを、忘れないようにね」カメリアはそう言って
「やっぱり、アジュガの孫だね~集中力は、半端ないよ」と、嬉しそうに言う
そして「この魔法が効くのは、怪我だけだからね
体力を回復させたり、毒を治す魔法迄は、教えている暇が無いのは残念だけど
この調子なら、自然に覚えるかも知れない」と、言った。
「キャドラまでは、山を越えたり、野宿する事になるかも知れない。
魔物だって出て来る、しっかり旅支度をしないとね」エルダーがそう言って
大きなリュックを持って来て、リリーが持っている物の中から
旅に必要な物を選んで、詰めてくれた。
その上に、体力を戻してくれる薬草や、毒消し草等の薬草。
非常食も、入るだけ詰めてくれ「これが、地図だよ」と
地図を広げ「ほら、この山を越えてガタラという町に行くんだ
その町から、さらに山を越え、北に向かうと、キャドラが有る」
と、リリーが行くべき道を、教え、その地図も、リュックに入れた。
エルダーは、徹夜して縫った、赤いマントを、リリーに着せ
足には、脚絆を巻き、革のブーツを履かせた。
「これで、支度は万全だね、後、旅で、一番大事な事は
決して無理をしないと言う事だ、良いかい」そう言うカメリアに
「分かりました、カメリア小母さん、エルダー小母さん、色々有難う」
そうお礼を言うリリーに「山の入り口まで、送って行くよ」と
エルダーは、付いて来た、どうしても、心配で堪らなかったのだろう。
バィールの街を抜け、山の入り口まで来ると
今まさに、その山へ向かおうとしている、一人の男の子がいた。
エルダーは、その子に「お前さんも、この山を越えるのかい?」と、聞く。
「ああ、そうだけど」そう言ったのは、やはり旅支度をしている
15~6歳の男の子だった。
「この子も、山を越えるんだけど、一緒に行ってやってくれないか?
何しろ、旅は初めてなんでね」エルダーがそう頼むと
「良いよ、俺も、一人より、二人の方が、楽しいだろうから」
男の子は、あっさり引き受けてくれた。
「良かったね、リリー、じゃ、気を付けて行くんだよ」
「はい、小母さん、色々お世話になりました、有難う御座います」
リリーは、もう一度お礼を言って、男の子の後ろを追った。
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