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「オリバー、この一年、あたしがどんなに寂しかったかわかる? 誰とも話せず、何の楽しみもなく、ただ時を刻むだけの毎日なんて、もう耐えられないわ」
「エリザベス……」
「オリバーが街に行ってしまっただけなら、まだ我慢できるわ。でも貴方、みんなを丘に封印してしまったんだもの。誰も遊びに来てくれなくて、あたし、ひとりぼっち……」
王女のごとく振る舞っていたエリザベスが、別人のように声を震わせている。
「前みたいにみんなで、楽しく暮らしましょうよ……」
彼女の懇願を、オリバーはうつむきがちに聞いていた。少年の視線の先にあるのは、延々と続く墓標。
「なぁ、だから、みんなって──」
不吉な予感にゾワつきながら、スライムが質問を繰り返した時。
オリバーが目を伏せたまま、ふっ、と笑った。
「結局、僕はどうしたって死霊魔術師なんだなぁ」
「何──うわっ?!」
試験管が傾き、スライムの体がピチャンと揺れる。それほど大きく息を吸い込み、オリバーが声を張り上げた。
「みんな、ただいまー! 出ておいで!!」
彼が誰に呼びかけたのか、スライムにはわからない。が、遥か下から、身のすくむような冷気と相反する熱気を感じて、思わず墓地を見下ろした。
黄昏時の西日を浴びた丘の土が、あちこちで盛り上がる。そこから次々に、手が、足が、頭が、突き出した。
墓地の住人たち──つまり死体が、土から這い出して来たのだ。
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