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「おかえり、オリバー!」 「ただいま、フィフィ」 「いささか早すぎる帰還ではないかね、坊?」 「リチャード……やっぱり僕、魔道士に向いてなかったみたい」 「自分の可能性を見限るなど五十年早いぞ、小童(こわっぱ)め」 「街の学校でいじめられたの? かわいそうに、フィフィの胸で泣いてもいいよ?」  土で汚れた白いドレスのゾンビが腕を広げる。その胸はほぼ白骨化していて、決して柔らかそうには見えない。 「ひえぇ……っ」  オリバーの胸側に身を寄せたスライムを、騎士のような格好のゾンビが腰を曲げて覗き込んだ。 「おや、これは?」 「カメ吉だよ、リチャード。学校で僕が」 「錬成したのか、大したもんだ!」 「そう……かな」 「無論だ。命を生み出すってのは、並大抵のことじゃあない。一年で随分と成長したなぁ、坊は」  目を見開いたオリバーの胸の震えが、スライムにも伝わってきた。  肉の落ちた眼窩(がんか)に凝視された時は生きた心地がしなかったが、眼球のないリチャードの眼差しには、なぜか慈愛を感じる。  思えば、スライムを錬成したオリバーも、生まれたスライム自身も、誰かに褒められたのは初めてだった。  ゾンビたちが腐った体を引きずり丘を下りて来る光景は、ホラーでしかなかった。けれど、時計塔にやってきた彼らはみな朗らかで、地上で出迎えたオリバーとエリザベスに、温かい声をかけてくれる。  いまや塔の周りはゾンビだらけだが、再会を喜び合いおしゃべりに花を咲かす光景は、さながら年寄りの同窓会だ。
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