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4.
「おかえり、オリバー!」
「ただいま、フィフィ」
「いささか早すぎる帰還ではないかね、坊?」
「リチャード……やっぱり僕、魔道士に向いてなかったみたい」
「自分の可能性を見限るなど五十年早いぞ、小童め」
「街の学校でいじめられたの? かわいそうに、フィフィの胸で泣いてもいいよ?」
土で汚れた白いドレスのゾンビが腕を広げる。その胸はほぼ白骨化していて、決して柔らかそうには見えない。
「ひえぇ……っ」
オリバーの胸側に身を寄せたスライムを、騎士のような格好のゾンビが腰を曲げて覗き込んだ。
「おや、これは?」
「カメ吉だよ、リチャード。学校で僕が」
「錬成したのか、大したもんだ!」
「そう……かな」
「無論だ。命を生み出すってのは、並大抵のことじゃあない。一年で随分と成長したなぁ、坊は」
目を見開いたオリバーの胸の震えが、スライムにも伝わってきた。
肉の落ちた眼窩に凝視された時は生きた心地がしなかったが、眼球のないリチャードの眼差しには、なぜか慈愛を感じる。
思えば、スライムを錬成したオリバーも、生まれたスライム自身も、誰かに褒められたのは初めてだった。
ゾンビたちが腐った体を引きずり丘を下りて来る光景は、ホラーでしかなかった。けれど、時計塔にやってきた彼らはみな朗らかで、地上で出迎えたオリバーとエリザベスに、温かい声をかけてくれる。
いまや塔の周りはゾンビだらけだが、再会を喜び合いおしゃべりに花を咲かす光景は、さながら年寄りの同窓会だ。
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