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置いていくつもりだったなんて。予想もしなかった彼の意図に、スライムは驚愕した。
失敗作だからか……そうだよな、何の役にも立たない俺なんか。
にらみ上げるスライムの視線を避け、少年は顔を横向けた。
「君だって、僕が気持ち悪いでしょ……?」
彼の言動は、一見飄々としているけれど。スライムは気付いた。気味悪がられ、拒絶されることを恐れ、その碧い瞳と唇が震えていることに。
「ざけんなよ、てめえ! 俺様を置いていこうなんざ、冗談じゃねえ!」
「……カメ吉?」
「初めての錬成生物は、一生の相棒なんだろ!?」
スライムの言葉にオリバーは、初めて見せる満面の笑みで頷いた。
「うん!」
それは、新たな旅立ちの春。
時計塔の周りには、少年の背中を優しく押す、温かな風が吹いていた。
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