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街の魔道士学校の教室でオリバーに出会ったのは、一昨日のことだ。試験管の中に錬成された自分を「カメ吉」と呼ぶこの少年のことを、だからスライムはまだ、よく知らない。
ガラスの外から自分をじっと見つめる、大きな碧い目。スライムが生まれて初めて見たものは、まだ十ニ、三歳と思しき彼の顔だった。他の生徒より頭一つ小さい彼は、もしや稀代の天才魔道士かと思ったのに。
「君が錬成する生体は確か、亀の予定だったね、オリバー・クロックフォード」
教師らしき大人に眉をひそめられ、クラスメイトにドッと笑われた彼は、どうやら優等生ではないようだった。
「きれいなゼリーができたじゃないか、オリバー!」
「ゼリーって言うより、キウイのソースだろ」
「仲良く遊んでやれよなぁ」
各々カエルやネズミを手に乗せた生徒たちは寄ってたかってオリバーをからかい、彼はといえば碧い目を半分閉じた物憂げな表情で、試験管の中のスライムを見つめていた。
「ガッカリしたのは、お互い様だからな……」
スライムが悪態をついたのは、口が遅れて形成された真夜中。学年末試験落第を覚悟したオリバーが、まとめた荷物の隣で眠っている、寮の部屋でのことだった。
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