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「ちょうど貴方の村からSOSが届いていますよ、クロックフォード君」  オリバーに落第を通告した魔道士学校の学長は、うなだれる彼に一通の封書を手渡した。 『大時計が故障した。修理に来なさい』  スライムには泥だらけのミミズが這いずった跡にしか見えない手紙は、そんな内容だったらしい。 「あまり気が進みません」  そう呟いたオリバーに、学長は鷹揚に微笑んだ。 「故郷を(ないがし)ろにするようでは、一流の魔道士にはなれませんよ。町の修理屋にも時計職人にも直せなかったそうですから、もしも貴方に修理できたら、来年も学院に残ることを認めましょう」 「本当ですか?」 「ええ。寮の部屋もそのままにして待っていますよ」 「ありがとうございます!」  最敬礼したオリバーは、忘れていた。その胸ポケットには前日から、錬成生物が住んでいることを。  逆さまにされたスライムは、蓋のない試験管から学長室の床にトロリと流れ落ちた。 「ぎゃあ!」 「あらら」 「うわぁ……」  スライムと学長、そしてオリバーは、三者三様に声を上げた。緑色の体はみるみる床の埃や何かの毛を巻き込み、スライムがどんなにがんばって背伸びをしても、水溜りの裾が広がっていく。 「お前っ、早く拾えってぇーー!」 「えぇ……なんか汚いなぁ」
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