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尻込みするオリバーの向かいで、学長が人差し指をピンと上げた。それだけの動きでスライムの体は宙に浮き、取り除かれたゴミがひとりでにゴミ箱に吸い込まれる。
「初めての錬成生物は、一生の相棒になると言われているんですよ。大切になさい」
学長がそう言うと、その背後の水槽で、虹色の金魚がパチャンと跳ねた。
「一生の相棒……」
学長の魔法に目を輝かせていたオリバーが、顎を引き、胸の試験管に収まったスライムに視線を落とす。
スライムはここぞとばかりに、精一杯キラキラした顔で彼を見上げたのだが。
「はぁ……」
オリバーからもれたのは、深いため息だった。
「てめえこのガキ! 失礼だろチクショー!!」
* * *
『クロックフォードへ
大時計の修理完了後、村役場へ報告のこと
村長』
時計塔の扉には、それだけを書いた貼り紙が釘で打ち付けられていた。
「感じ悪いなぁ、これが人に頼みごとする態度かよ」
スライムが悪態をつくと、オリバーはため息とともに深く頷き、古い木戸を開けた。
「クビにしたくせに、ほんと勝手だよね」
「クビ?」
「僕の家は代々、時計守でね。この時計塔の管理が仕事だったんだけど」
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