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「エリザベス、どうして針を止めたのさ。役人がきちんと世話してくれているんだろ?」  目の前に誰かがいるみたいに、オリバーが問いかける。すると、甲高い女の声がわんわんと塔内に木霊(こだま)した。 「だって、やってらんないわ! あいつら、毎日ただ錘を巻き上げればあたしが黙って働くと思ってるのよ!」 「仕方ないじゃないか、時計って普通はそういう仕組みなんだから」 「このあたしを、他の時計と同列に考えてもらっちゃ困るわね。毎晩ふわふわの羽ぼうきで埃を払って、晴れた朝には窓を全部開けて風を通して、あたしが指示したところに潤滑油を垂らしてくれなくちゃ」 「それで、『世界一きれいだね』って毎日言うように、役人に頼めって? そんなの無理だよ。いよいよ僕の頭がおかしくなったと思われるのがオチだ」  オリバーが口をへの字に曲げると、わがままにまくしたてていたエリザベスが静かになった。  塔内の空気が、急にしっとりと重くなったように感じる。 「オリバー、貴方の頭がおかしいなんて、は誰も思ってないわよ?」  その声はいかにも悲しげで、今にも泣き出しそうだ。  話が見えない。というか、相手の姿も見えない。 「オイこら、ちょっと待て! 俺様を除け者にして話をするんじゃねえよ!」  スライムが抗議すると、堅固な塔がビクリと揺れた。 「何よあんた、誰?」 「俺様は」 「どこにいるの? 姿を見せなさい!」 「いやそれこっちのセリフだろ」
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