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「絶対に別れない、つもりなんだけど……」  うーん……うーん……どうしようぅぅ、っ。 「おい、チカ」 「はいっ」 「十日くらい前に届いた資料、どこやったか知らねぇか?」 「十日前のは書棚の左端に入ってたのを見たよ。寄木細工の写真集と、ドルイド教の考察本でしょ?」 「それそれ。やっぱ、お前に聞くのが一番早いな。サンキュ」 「いえいえー。あ、もう少ししたら書斎にコーヒー持っていくから」 「おう、待ってる」  あー、びっくりしたぁ。危ない、危ない。独り言には気をつけなくちゃ。  いったん止めていた手を再び動かし、テキパキと掃除を進めつつ、チカは自戒する。  お掃除ワイパーを持ったまま零していた苦悩は、幸いにも壱琉には聞かれていなかったようだが、ここは宮城邸。家主のテリトリーなのだから、彼に聞かれて困ることはお口チャックを心がけなければ。
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