宣告・2022年3月4日

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 母親の葬儀を済ませたアタシの中はになった。 全てが燃え尽きて真っ白な灰になった。    みんな居なくなった家の中は         静寂(せいじゃく)そのもので  唯一、居間の置き時計の秒針の音だけが嫌味に響く縁側(えんがわ)で、()りし日のお母さんみたいに(とう)の椅子に座り、()れたてのコーヒーの香りを楽しむ。 ーー真梨子、コーヒー飲む?新作の豆買って来たから。 ーー美味しいっ! ーーそう言うと思った。 ーーさすが親子だね。 結局、あの男と同じ空の下で     同じ空気を吸うことさえ嫌で、   腹違いの兄がいるアメリカ西海岸の街、    シアトルの郊外にある       ベルビューに引っ越した。 ーーお母さん、ごめんね、これからアメリカに行きます。 お母さんの墓に報告して      旅立ったアメリカで      まさか余命を宣告されるなんて      思っても見なかった。 それもお母さんと同じ病気で。    ただ自分の人生をやり直したかった。    ただそれだけ。 アメリカに行った時、アタシの歳はすでに       32になる二ヶ月前だった。    まさかそんなにすぐに     自分の命が尽きるとも知らずに。
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