2.ジャッジメント・デイ:9月9日

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 問い掛けに対し正直に答える。 「心当たりはありませんか?」  訊ねてみると聖子は、 「イジメて、ごめ、ごめんなさい。クビにし、クビに─」 「ハッキリ言ってくださいよッ! 聞こえないんすよッ!」  そう言い放って意地悪をする。  彼女は必死に大きく口を動かして、力いっぱい声を出す。 「イジメて、ごめんなさい! 朝山君を、クビにして、ごめんなさい! 赦して! 赦して、くださいっ!」  いい台詞だった。  だが、もう遅い。  ワン! ワン! ワン!  後ろのほうでポメラニアンが吠えてきた。聖子の飼い犬だ。イノシシなんかを捕獲するケージに閉じ込めてある。あの子のお蔭で彼女を誘き出し、車で誘拐することが出来た。 「それ以外にも何かあるでしょ?」  僕は訊ねた。さっきみたいな意地悪のつもりで訊ねていない。真剣な質問だ。 「他に何かないですか? 自分が会社で何をしてきたのか? (やま)しいことたくさんあるでしょ? 他にも大きなことやらかしてるでしょ?」 「それ─そ、それは」  聖子が再び力を振り絞って何かを言いだそうとしている。僕は耳を傾けた。 「他の、人達の、ことは、朝山君と、関係ない、じゃない─」  もういいや、と思った。  手に持っていたカッターナイフを彼女の顔に振り下ろす。  恨みの雪はまだ溶けない。
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