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3.ファースト・インパクト:1月18日
「朝山。お前はクビだ」
夕方の6時。デスクが整然と並ぶオフィスで、関西本社本部長の横山大吾が言い放った。きつい口調だ。リクライニング式の革張りの椅子に深く座っており、表情は力の籠っていない笑顔だった。
聖子を殺害する8か月前だ。
どうしてですか、と訊ねたら、業務規定を数十回以上も破って営業を妨害したからだ、と笑顔で怒鳴られる。彼はその証拠だという内部調査書と告発の文書を目の前のデスクに叩き付けた。50枚以上の書類だ。確認すると身に覚えのない規定違反やクレームが記載されている。
出鱈目です。
嘘っぱちじゃないですか!
具体的な証拠はないんですか?
誰が告発したんですか?
告発した人の言うことには信憑性があるんですか?
何度も食い下がるが、2時間後に横山は僕を無視してオフィスを出て行った。
「これ以上仕事をしていたらサービス残業だ」
彼はそう言い残した。
渡された解雇通知を見る。
理不尽で一方的だが、どうしようもなかった。規定違反や営業妨害が理由であれば、会社側から一方的に社員を解雇することが出来る。当然、僕が書くような書類は一切ない。何もしていないのに、何も出来ずに一気に無職になってしまった。
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