3.ファースト・インパクト:1月18日

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「朝山くうん。もう同僚じゃないんだから、さっさと出て行きなさいよ。邪魔よ。いい年した大人なんだから、それくらい分かるでしょお」  自分のデスクに戻ると、聖子が笑顔で言い放ってきた。その隣で、お腹が出っ張っている人事部長の宮根大貴が立っている。彼は笑顔じゃなかった。僕のことが心底嫌いなのだ。  彼等が口々に嫌味や悪口を言い放っていく中、デスクの傍にある青いゴミ袋からコート、バッグ、筆記用具等の荷物だけを取り出す。会社の書類やゴミと一緒に入れられるとは。  悪口や物を隠されるようなことは普段からあった。会社の人間じゃなくなった途端に、嫌がらせが大胆になるなんて。監視カメラの映像も消去されているんだろうな。  擁護するつもりはないが、関東本社ではこんなことはなかった。企画開発部で意見を言っても理不尽に怒鳴られることはなく、少なくとも存分に仕事をすることが出来ていた。 「いい加減にしてください」  後ろを振り向くと、係長の稀桜(きざくら)麻衣子さんが立っていた。同じ企画開発部の先輩だ。 「あらあ、稀桜(きざくら)さん。仕事はどうしたの?」 「森井社長がオフィスで待っています。新商品の試作品について訊きたいことがあるそうです」 「あら、わざわざありがとう。レディーとして言ってあげるけど、社会人の女性なら髪の手入れぐらい、きちんとやったら? みっともないわよ」  聖子は社長のオフィスへと向かった。 「まあまあ。朝山のことは俺からフォローしてあげるわ。せいぜい頑張って」
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