おかえりなさい

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おかえりなさい

 俺 は 、幼 い こ ろ は 何 か 見 え て い た ら し い 。母 は 、よ く 俺 に「 優 希 は 霊 感 が あ っ た の よ 。」 と言った。でも、俺には霊たるものを見えたことも、それらの声を聞いたこともない。 それを母に伝えても、それでも、母は言い続ける。  なので、以前何があったのか聞いた。 「これはね。夏希が私のお腹の中にいるときの話よ。私と優希と二人で車で出かけて いるとき、斜め後ろにチャイルドシートに座っている優希が、突然、『ひっこすんでし ょ。』って言うの。以前は今の家じゃなく、別の家に住んでいて、今の家に引っ越す話 はお父さんとしか話をしていなくて、幼い優希を寝かしつけてから話していたの。引っ 越す話がまとまってから、優希に話そうと思ってたものだから、すっごく驚いて、叫び そうになるのを抑えながら、『どうして知ってるの?』って、聞いたの。そしたら、平 然とした顔で、『となりにいるこがおしえてくれたよ。』ってでも、当たり前だけど誰 も座っていないの。運転中だけど、思わず二度見しちゃった。でも、その後、この子は 赤ちゃんの頃から、私に見えないものを見る子だったなと思い直したの。事故を当てた 後だったから、妙にそう言うのに、納得しちゃったの。でも、まぁ、物心ついてから、 そういうこと言わなくなったわね。」 「そういうのって幼いときだけ見るって言うじゃん。だから、俺は成長したってこと だよ。」 「そうね。でも、まだまだ子供よ。」 そう言って笑った。  それから、数年が経ち、中学生になった俺は、帰宅を急いでいる。ゲームのイベントの開始時間が迫っているからだ。この時間は必ず小学生の夏希だけは帰ってきているので、家に着いた俺はチャイムを鳴らし、早く鍵を開けて欲しいので家に向かって叫んだ。 「ただいまッ!早く玄関、開けてッ!」 家の中からトン、トン、トンと階段を下りる音とともに、 「おかえりなさい。すぐあけるね。」 とてもか細い女の子の声が返ってきた。暫く、鍵が開くのを待っていたが、一向に鍵が開く気配がしない。仕方なく、鞄の奥から鍵を探し出し、鍵を開けた。玄関を開ける と夏希の靴がない。 「あれ、兄ちゃん帰ってきてたんだ。」 夏希が家の門の外から顔を出した。 「どこに行ってたんだ?」 「 友 達 の 家 だ よ 。」
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