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21時すぎのコンビニの光は元気に輝いている。
里紗と真村はカップラーメンの陳列棚の前に佇んでいた。里紗がカップラーメンを物色している間、真村の視線はすでにタバコの陳列棚へと吸い寄せられている。
「真村さん、選んでよ」
それが面白くない里紗は真村の白シャツの裾を引っ張った。僅かに見下ろしてきた真村の瞳に、甘えるような表情の里沙が映り込む。
「俺のカップラーメンのセンスを試してるんですか?」
「ううん。里沙、カップラーメン食べたことなくて、どれがいいのかわかんない。」
こいつマジかよ、って顔だ。
いい大人なんだから、隠す素振りくらいは見せるべきだと里紗はしみじみと思う。
「…この塩分控えめの、」
「えー?それって美味しいの?」
真村の濡れた黒の前髪から覗く、美少年のような顔立ちが不機嫌さに歪められる。
彼は里紗より一回りも年上で、今年30になるのだという。あまりにも若々しすぎる容姿に、初対面の人間は誰でも驚く。
真村と過ごすようになって3日。美人は飽きるというのは大嘘だ。3日でも慣れないが正解だった。時折その美しさが恐ろしいとも感じてしまうので、真村は人間ではない可能性もある。
やけくそになった真村は、買い物かごに多種多様のカップラーメンを放り込み始めた。
「そんなに買って大丈夫なの?」と里紗が聞いてみれば、「経費で落とすので」と低い声で返される。
「君、未成年?」
真面目なコンビニ店員に当たったらしく、真村はタバコ購入にストップをかけられていた。
里紗は笑いを堪えるのに必死だった。
その恵まれた容姿にも苦労はあるみたいで、少しだけせいせいする。
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