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「先輩、遅かったじゃないですか。あ!とうとうJKに手を出したんだ!」
新宿区の南に位置するマンションの、3階の角部屋。
廊下の先にある10畳ほどのリビングでは、ストレッチをする不破がその長い御御足を披露していた。
「ウホウホうるさい。いい加減檻に入れるぞ」
「その前に私が先輩の首折っちゃうんで無理ですね。」
「マジのゴリラじゃねえか。なんで野放しにされてんだよ…」
この数日で嫌という程わかったことがある。真村と不破は仲がとても悪い。
こう言った小競り合いは日常茶飯事だった。
里紗が洗面所で手を洗った後、再びリビングルームへと戻ってくれば、真村がケトルでお湯を沸かし始めていた。
里紗に気づいた真村はレジ袋を広げて差し出してくる。「3つ選んでください」という一言を添えて。
「ゴリラ、餌の時間だ」
そして、真村は未だストレッチに励む不破に視線を向けることなく呼びかけた。
「は?不破ですけど。先輩、幼気な女子虐めて楽しいですか?」
「お前より俺の方が20倍幼気だから何も問題ない。それより飯。いらねえなら俺が食べるぞ」
「くそ〜!万年年確男のくせに偉そうによお!」
不破は悔しさに床をバンバン叩いている。なるほど、これがゴリラと呼ばれる理由かと、里紗は妙に納得してしまった。
のそり。まるで軟体動物のような動きで立ち上がると、不破はリビングテーブルへと歩み寄る。レジ袋を覗き込む仕草で、不破のワンレングスヘアの長い前髪がはらりと落ちた。里紗は彼女の横顔に釘付けになる。
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