事件ファイル "MOTHER"

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不破はすっきりとした顔立ちの美女だ。真村と並ぶとその顔面偏差値の高さに目眩がしそうになる。言うなれば、2人の見目は心底お似合いであった。 ただし、身長差をのぞいての話である。 里紗の視線の先には真村を見下ろす不破の姿がある。この光景を目にするたびに里紗は密かにほくそ笑むことにしている。 「え、待ってください、これ全部カップラーメンなんですけど!?」 「里沙さんの希望なんだよ。文句言うな」 不破が恨めしさを滲ませた表情で里紗を見つめてくる。顔にもっとマシなものを買ってもらえよとはっきりと描いてあった。 年下相手にこうも感情豊かになるのは大人気ないと思う。里紗は何も分かってないような笑顔を見せつけてやった。 里紗が選んだ味噌と豚骨と坦々麺は、胃がもたれるには十分すぎるほどの油が含まれていた。真村と里紗は胃薬を飲んでおとなしく就寝する。 不破だけが健康体そのもので、夜のランニングへと繰り出していた。 「あいつは人間寄りのゴリラですからね、羨ましがらなくていいんですよ」 顔色の悪い真村はそう吐き捨てた後、フラフラと浴室へと消えていった。 里紗はベッドに横になり目を瞑ると、すぐに母の亡き顔が迫ってくる。そして、またあの吐き気に襲われてしまうのだ。 慌ててトイレに駆け込んで、カップ麺を全部吐き出してしまう。 再びベッドに戻っても、布団の握りしめる手には力が篭ったまま。里沙は今日も夜に耐えるようにして眠りについた。
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