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「里紗ちゃん、おはようございま〜す」
朝日がすっかり昇りきった頃、リビングルームにはすでに朝食が用意されていた。不破は気味の悪い色のジュースを飲んでいる。
「それ何のジュース?」
「レバーと大豆と牛乳です、飲みます?」
「ううん、いらない」
里紗の席にはすでに朝ごはんが用意されていたが、コンフレークとバナナという簡易的なものだった。
不破の向かいの席に腰掛けた里紗は、なんとなく真村の姿を探してみるも、見当たらない。
「…今日も真村さんは起こさないんだ。」
「ミニマムラ先輩、寝起きの機嫌最悪だから」
「いつも昼過ぎまで寝てるじゃん。三十路を過ぎたいい大人なのに、いいの?」
「良くないに決まってます。先輩の死後は地獄行きでしょうね!」
不破に妙なあだ名をつけられている真村は見本にしてはいけない怠惰な生活を送っている。
そして、不破の口いっぱいにバナナを頬張る姿も正直見てられない。
「不破さん」
「うん?」
「バナナ、似合うね」
里紗の嫌味に気付かず、不破が照れ笑いを浮かべるので、つい、毒気を抜かれてしまう。
…つまらない。
用意されたインスタントコーヒーに口をつければ甘みが舌に乗る。「里紗ちゃんは砂糖入りが好きでしょ?」と得意げな不破は純真無垢という言葉が似合う。
里紗にとって、不破は何もかも癪に障る女だった。
「里紗ちゃん。学校、無理に行かなくてもいいんじゃないですか?」
車に乗って数十秒後、不破は必ずそう尋ねてくる。里紗は顔を顰めてしまうのを必死に我慢した。毎度毎度、さすがに聞き飽きた。
「学校は楽しいから行きたいの」
嘘。
本当は、あの家にいると気が狂いそうになるから。
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