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「自宅には医療器具も揃えられていて、血液クレンジング後には栄養剤を投与していた。看護師免許を持つ友田裕美は栄養剤の点滴を自ら行っていたようだ。
栄養剤とヂアミトールの保存容器は市販の容器に入れ替えられているから、間違いが起きてもおかしくない、というのが現場の見解。
死亡日の翌日には大規模な講演会が控えていたし、自殺の可能性は低い。
ただし、事故死と決まったわけでもない」
「最近、ヂアミトール点滴による毒殺事件があったばかりですもんね。警察としても他殺の線を消すわけにはいかないんでしょ」
「…まぁ、概ね真村の言う通りだな」
大山警部から資料を受け取った真村が腕時計へと視線を落とす。
「ゴリラ、もうすぐ17時だ」
「だから、不破です!そろそろマジで折りますよ、」
首、と言いかけた時には真村は廊下へと足を踏み出していた。足先は確かな意志を持って、どこかしらの方角に向けられている。
「ミニマムラ先輩!」
「…おい、なんだそのクソみたいな名前。殺すぞ」
不破は、癖毛の目立つ前髪の合間にある、その美しい瞳で睨みつけられる。
しかし、真村の身長は167cm。不破との身長差は8cmある。どちらかといえば、睨み上げる、という表現に近かった。
ミニマムラというのはなかなか上手い表現なのでは、と不破は心の中で自画自賛する。
「どこいくんですか?」
「最後の検視が行われているから見てくる。」
照度の足りていない蛍光灯の下。
薄暗い廊下で二人は対峙する。
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