6人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ
prologue
南新宿警察署捜査1課の大山班は、特殊な人間ばかり寄せ集められ、通称"動物園"と呼ばれている。
大山班に割り当てられた会議室は、空調が古すぎて送風からは異臭がするし、窓の数が少なく熱が篭りやすい最悪な位置にあるため、誰も近寄ろうとしない。閑散としているという点では、居心地が良いかもしれない。
昼休憩中、大山警部が冷やし中華のフィルムをビリビリと剥がしていると、天井から吊るされたテレビから女性アナウンサーの声が聞こえてきた。
「————••••友田裕美区議会議員が死亡した事件から数日が経ちました。現場の状況から事故死の可能性が高いとされていますが、ヂアミトール投与による殺人事件と酷似していることから、捜査は慎重に進めるとしています。
また、友田裕美さんには一人娘がいるとのことで…」
大山警部が勢いよく顔を上げた先には、友田裕美の娘の写真がテレビな映し出されている。
「おい!真村ー!不破ー!?」
「お二人ならさっき口喧嘩しながら出て行きましたよ」
背後からの気だるげな声は、班で1番若い桜林巡査長のものだ。ざるそばを啜りながら箸の先で扉を指している。
「あいつらまた喧嘩してんのか」
「あの小競り合いは署の名物ですし」
「とうとうマスコミに里紗さんの存在がバレたってのに…」
「大山警部。非常に言い辛いんですが、相性最悪なあの2人に里紗さんを保護してもらうのはどうなんでしょう。もしかして、警部の人事的才能は皆無感じですか?」
「…お前はもっと言い辛そうな話し方を勉強しろ」
生意気な桜林をひと睨みしてから、大山は真村にメールを残すことにした。すぐに「了解です」という簡素な返事が返ってくる。
友田里紗はまだ高校生だ。事件後から精神的にも不安定な部分が見受けられる。
人事の才能がないと言われても、今は2人を信用するしかない。
相性最悪で最強なあのバディに。
最初のコメントを投稿しよう!