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01
生きるのも死ぬのも、全てに良し悪しはつけられない。だから善も悪もない。
だから、誰かの味方や敵になるのではなく、自分の心の味方になるのが良いだろう。
ファムドットは流浪の少女だ。
記憶をなくして、いつからかさすらっていた。
おそらくひどい目に遭っただろう。
気が付いたら血まみれだった。
だが、ファムドットは誰も恨まない。
それは記憶がないからではなく、それが自然の理だから。
そんなファムドットを拾ったのは、ジスという少年。
少年は、身寄りのないファムドットに、剣を教えながら旅をする。
そんなジスは、竜をも殺す凄腕の剣士だった。
黄金の竜に家族を殺されたため、仇を討つために剣の腕を磨いているという。
ファムドットは、その敵討ちの手伝いとして、拾われた。
竜は嫌いではない、だがジスには恩があった。
だから、ジスの手伝いをすることにした。
その日から、毎日、訓練ばかりだった。
しかしファムドットは、特に抵抗感があるわけではなかった。
強くなれば、獣を仕留めて食べ物に変える事ができるし、誰かを護衛して護衛料をもらう事ができる。
そのお金でご飯が変えるからだ。
ジスがファムドットを利用しているならば、ファムドットもまたアイジスを利用していた。
旅を続けた中で、ジスはとうとう仇の竜を見つけた。
その竜は、黄金の竜。
ジスは自らが育てた弟子、ファムドットと共に三日三晩戦い抜いた。
その末、相打ちになって倒れたが、ジスは満足そうな笑みをうかべて息絶えた。
ファムドットは一人になった。
墓を作り、ジスを埋めた後、ファムドットは流浪の剣士として各地を練り歩く事にした。
特に目的もない。
当てもない。
ただ、気が向くままにあちこち歩いては、気まぐれに何かと戦って、何かを倒す生活を送っていた。
そんな中、黄金竜の里があるという噂を聞いた。
ジスと違って恨みがあるわけではないため、ファムドットは特に強い目的があったわけではない。
だが、他にやる事がなかったため、その黄金竜の里を探す事にした。
しばらく、様々な場所を捜し歩いては、スカを食らわされることが続いた。
しかし、数十か所目にとうとう里を見つける事ができた。
それは、深い谷の下だった。
しかし、ファムドットは、谷に降りていく最中に足を滑らせて落ちてしまった。
もはやこれまで、と死を覚悟したファムドットだったが、そこを黄金の竜に助けられたのだった。
思わぬ形で里にまねき入れられたファムドットは、様々な黄金竜に出会った。
目にまぶしい黄金の竜は、人の言語を操り、ファムドットに様々な事を話しかけてくる。
子供の竜は時に好奇心旺盛だった。
ファムドットは旅の話などをよく答えた。
しばらくその里に留まる事にしたファムドット。
子供竜達は毎日のように訪れた。
その里の黄金竜たちは特に人間を襲うような様子は見られなかった。
ファムドットは、その黄金竜に興味を抱いたため、それからもお世話になる事にした。
ジスを苦しめたのも竜だが、ファムドットが好いた竜もまた竜。
けれど、矛盾はなかった。
心のままに、行動した結果だった。
ファムドットは、人の世に出られない竜たちに、時折人間の世界でおきている出来事を聞かせたり、おみやげなどを持っていったりしながらその後もすごしていた。
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