終わり

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「て、ててて店長~」 「うっせー益子クビな。」 「ち、ちょっと、話だけでも聞いてくださいよ!年々扱いが酷くなって…って、そうじゃなくて!真鞘さんが!」 「真鞘?真鞘がどうした?」 「せ、せせせ接客してるんです~!」 「!!」 再び心のオアシスを得た俺の店は相変わらずの人気ぶりを誇り、今では俺は完全に製造にまわり仕込みも1日3度、ホールはバイト2人体制。営業時間も少し伸ばして更に利益を上げている。 それもこれも全て真鞘のおかげだ。その可愛さで俺のモチベーションを上げてくれることだけでなく、彼はパン作りのよき相棒になりつつある。丁寧で実直というパン職人必須の素養から今では数種類のパンの仕込みを任せるまでになっている真鞘。これ以上望むことがあろうか!引きこもりがなんだ、コミュ障がなんだ。日々俺の傍で働き、笑い、支え合っていけばそれでいいのに。それでいいのに真鞘ったら! 「ま、真鞘…!ただでさえ可愛くてかっこよくて素直で真面目なのに、この上コミュ障まで克服するなんて…!」 「いやよく見てください店長!真鞘さん白目剥いてますよ!お客様も超ビビってっから!」 「駄目だ涙で前が見えん…」 「お前ほんと駄目だな!真鞘さーん!」 益子が真鞘(お客様)を助けに飛び出す。俺は涙を拭い、真鞘の初めての接客姿を写真に収めるためのスマホはどこに置いたかと、胸ポケットやズボンのポケットにパタパタと手を当てる。 「はぁ…ダメだった…」 「いえ、真鞘さん頑張ってましたよ!」 「でも…」 結局すぐにお客様は帰ってしまい、接客する真鞘は撮れなかった。その代わり、俺はレジで小さく体を丸めて反省中のその背中をこっそり写真に収める。 接客する真鞘、スマホに姿を収めるだけで心が満たされる俺。 新しい真鞘、新しい俺。毎日新しい事を見つけ、変わっていくのだろう。その変化の名はきっと【幸せ】だ。 日々は明るく暖かい。これからもそうに違いない。真鞘、お前がいれば。 未来への膨らむ期待に耐え切れず、俺はそっと笑った。 fin
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