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引きこもりがパン屋の手伝いをするようになって半月が経つ。経営はぼちぼち、バイトもようやく仕事が定着してきた。残るはプライベート…なんだが。 「真鞘~また階段にいたのかよ。中入っとけって言ったろ。」 「入ってたし。今出たんだし」 「なんで?あ~もしかして俺出迎えてくれた的な?」 「……ふん」 「へぇー可愛いなおい」 「黙れ。早く入れ、風邪ひく」 「うっ」 …まただ。また人をきゅんきゅんさせやがって畜生。 そろそろ恋人とか作ってプライベートを充実させたい俺の一番の問題は、目の前のこの(元)引きこもりだった。 ……… ……………… 仕事に慣れ、だんだん工房にいる時間が長くなった真鞘は、家に帰ることができなくなった。理由は人が増えてくるから。本人曰く、あの完全武装の状態ですら朝の学生さんやサラリーマンの中には飛び込めないらしい。 俺が早めに帰してやりゃいいんだが、なにせ朝はとにかく忙しいので、いつも気がついたら開店の時間を迎えてしまう。店の裏手のゴミ捨て場で小さくなって隠れる真鞘を見た時は、益子と2人涙が止まらなかったものだ。 そこで俺は、店から自転車で5分(しかも裏道だけを通る)の自宅の合鍵を渡しておいた。もし店を出るのが遅くなったら、俺の家でゴロゴロしとけばいいと。ついでに掃除洗濯をしていてくれたら更に嬉しいと。 …で、気がついたらこれだ。 「風呂か、飯か。」 「風呂!なー真鞘、背中流して~」 「わかった。飯にラップかけたら行く。」 「あ、いや、冗談…だけど」 「なんだ冗談か」 「やっぱりお願いします!そして今日のご飯なに超うまそう!」 「あんかけ炒飯だ。母が持ってきてくれた」 「お母様最高!」 きれいな部屋に沸かした風呂。美味しいご飯と、毎日ときめきが止まらない…同居人? (なんかもう、これでよくね?) かつてないほどの充足感を覚える俺であった。
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