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「そうだ、皇帝暗殺するために、毒を使おう」  それを思いついたのは、暗殺者として王宮に潜入してから一か月後の事だった。  私は暗殺者として、現在皇帝を殺すため懐に忍び込んでいる最中だ。  けれど、未だに殺せていない。  ほぼ、懐に忍び込めているのに!  こんなに近くにいるのに、何もできてないのだ!  君、暗殺者だよね。一か月間なにしてたの。  って。  何もできなかったんだよ。  竹の葉を苦労して編んで作ったトラップで殺そうとしても、パンダとか熊とか犬とか暴れさせて殺そうとしても、側近を懐柔して間接的に殺そうとしても、全てふせがれてしまう。  皇帝は、獣並みの勘の良さだ。  格なる上は、まだ試してない毒殺をするしかない。  毒は嫌なんだよな。  子供の頃に、暗殺稼業でやってくためにさんざん、耐性つけさせられた思い出があるから。  見るのも嫌だったんだけど。  ここまで来たら、好き嫌いなんて言ってられない。  そういうわけなので意を決して、皇帝の料理に毒をひそませた。  しかし。  お食事の時間。 「今日は食わん」  ああ、またか。  危険を察知されてしまった。  皇帝は、食器を持つ事なくそう言った。  遠くから、自分の視力を駆使してよく見ると、銀食器が変色していた。  なに!  いつもは普通の食器使ってるのに。  何で、よりによって今日は銀食器なの!  銀だと毒に反応してしまう。  私は内心で悔し涙を流しながら、次の暗殺計画を立てるのだった。  皇帝は、傍仕えにまぎれた人間を見つめる。遠くの暗殺者が顔をひくひくさせているのを確認して嘆息した。  顔に出ている。  あいかわらず暗殺の機会が、分かりやすすぎる暗殺者だった。  しかし、正面からの戦闘力は確かなので、まともにやりあっていては勝てないだろう。  何度も同業の暗殺者を返り討ちにしている所を目撃した。  暗殺者を傍においておくなど危険極まりないが、それが阿呆なら使い道がある。  他の暗殺者の露払いをしてくれるし、退屈した時の暇つぶしにもなる。  万が一身を隠す必要が出てきた時の、口実造りにも便利だ。  だから皇帝は、今日も皇帝は暗殺者を泳がせておくのだった。
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