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2 どうしてもいじりたい
今日も悪魔くんがやってきた。
「やあ、悪魔くん」
都市に何かと、ささやかなる愛すべき細工をしていたぼくは、手を止めてあわてて駆け寄る。
よく見ると悪魔くんたら、顔も手足も傷だらけだった。
髪の毛もぼさぼさだし、黒い上下の服には、あちこち裂けていたり焼け焦げていたり。
「どうしちゃったの?」
「向こうの町で、エクソシストと戦ってきた」
「えくそしすと?」
「ようするに、悪魔払いをするおせっかいでやっかいな聖職者のことだな」
「勝った?」
「ああ。向こうがな」
「悪魔くん、負けちゃったんだ」
「ちがう。あえて勝たせてやったんだ」
悪魔くんいわく、あまりにも強い魔力を使うと、人間はますます狡猾に、卑怯な手をつかってくるので、たまには
「参りました」
と言ってやるのだそうだ。
「それよかオマエ、そこの町に行ってやれよ」
「えっ」
「ひとり死にそうだからよ」
「手を出しちゃったの?」
「もとからヤバかったんだよアレは。それよか、かなり求められてたぜ。『主の御使いは、まだでしょうか』ってさ」
……ぼくはしぶしぶ、でかける支度をする。
後ろで束ねていた金髪を解いてふわっと肩にかぶせ、白い服のすそについた糸ゴミを取り除く。
「じゃあ、行ってきます」
出がけにふり向くと、案の定、悪魔くんは、ぼくがもらった都市に手を伸ばしていた。
「見るだけ、だから」
ぼくと目が合うと、ちょっと決まり悪そうににやっと笑った。
……信用できない。
悪魔くんに教えてもらった町に着いた。
でも、いくら探しても、死にそうな人なんて一人も見つからなかった。
へとへとになって帰ってきて、あの都市の様子を覗いてみると――。
「やられた!!」
夜の都市には、歓楽街のネオン、そして、サラ金と新興宗教の看板がひしめいていた。
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