君が眠るのをずっと待っている

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26歳。 社会人4年目。 秋の始まる頃。 暑がりなのでまだ半袖。 涼しい夕暮れ。 風が物寂しさを連れてくる。 夏が去っていった。 ああ。 この孤独の瞬間は。 何にも替え難い。 空をかいで。 清々しさに浸る。 1人。 目を閉じる。 もともと人と関わるのは好きではないから。 来るもの拒まず去るもの追わず。 よく言えばそうだが、要は自分からは関係を作りにはいかない。 そんな私は、最近また変なものを受け入れてしまった。 仕事を終えて帰り道。 近くのスーパーへ立ち寄る。 玉ねぎとにんじんと豚肉と砂糖と、アイスを2つ、買って帰る。 米は炊いてある。 ほうれん草とブロッコリーが茹でてある。 「ただいまー」 家に帰ると。 どっと疲れが押し寄せる。 ご飯を作る気力などない。 買ったものを冷蔵庫に入れる。 化粧を落とす。 ベッドに倒れ込む。 シャワーは明日。 今日はもう眠る。 「その前に…」 ベッドサイドに置いてある。 日記帳を開く。 『アイスを買ったので食べてね。  言われてた砂糖買っといた。  瓶に詰めるのお願いします』 それだけ書いて。 目を閉じる。 限界だ。 私は。 夢の中に落ちていった。 次の日。 目が覚めると。 テーブルの上に。 味噌汁と卵焼き。 朝ごはんだ。 その隣には弁当が包まれている。 脱ぎ散らかした服が椅子の背にかかっている。 シワにならないよう伸ばされてる。 椅子の上には。 今日着る服とバスタオル。 昨日シャワーを浴びなかったからだろう。 日記帳を開く。 『シャワーくらいして寝なよ。  砂糖詰めといた。  豚汁作ったので食べていってね。  残りは夕飯に。  ほうれん草使い切ったので、  何かまた青菜でも買ってきてください』 「はーい」 宙に向かって返事して。 シャワーを浴びに風呂場へ行く。 服を脱ぎ。 熱い湯を浴びる。 お分かりいただけただろうか。 なんと私は、夜の間だけ現れる霊と。 同居しているのだ。
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