君が眠るのをずっと待っている

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『あなたは私の身体を使って動いているの?  ご飯を作るのも  お風呂に入るのも  入れてくれるんじゃなく  あなたが入っているの?  私に憑依して  私の身体で掃除しているの?  空き巣を退治したのも  私の体で?  キスも  私の唇を使って  自分で自分にキスしているの?』 最後の3行なんて、酷く悩んで言葉を選んだのに。 返事は、短かった。 『君が自分を大事にしないから  僕が大事にしてるんだよ』 ふと思った。 私は彼をちっとも大事にしていない。 名前も。 歳も知らない。 長らく思い込みで、私をベッドに運んだりシャワーさせたりしていると思っていたから、男と思い込んでいたけど。 性別さえわからない。 というか。 そもそもこんな人、本当にいるんだろうか。 私の空想の中の人ではないのか。 わたしが眠っている間、別人格が出てきているとか。 夢の中で夢遊病のように動き回ってるだけではないのか。 初めて現れた時だって、強盗は私に退治されたと言っていた。 本当に私が退治したのかも。 キスマークを見つめる。 腕や足にしかない。 背中にはない。 自分で自分を吸っているだけでは。 日記を、バサリと落とす。 こんな人、 初めからいなかったのでは。
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