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毎日毎日。
1枚のパンとコーヒー。
ときどき買って帰るアイス。
そんなお供物みたいなもので、幽霊とはいえ、一人の人が養えるはずがない。
ペットとでも思っていたわけ?
きっと私が食べていたんだ。
引っ越してくる前に母に教わっていた、たった一つの得意料理のポテトパイ。
友だちが来た時に出したサラダ。
先輩が美味しいからと作り方を教えてくれたスープ。
全部二人分用意した。
こんなに必死に料理をしたことなどなかった。
向かいの席に、誰も座ってくれないことが。
悲しかった。
久々にたくさん食べて。
お腹がいっぱいで。
少し気持ち悪いくらいだった。
朝起きて。
手のついていない一人分の料理に、ラップをかけながら。
「彼」なんていなかったのだと思い知った。
それっきり。
「彼」は現れなくなった。
伝言が何日も書かれず。
朝ごはんと弁当の用意もないので、自分で作っていくしかない。
でも。
ぐっすり眠れている気はする。
「彼」という人格が私の身体で夜中に動かなくなったせいだろうか。
「彼」が去っていったのか。
私に入れなくなったのか。
私に入らなくなっただけなのか。
分からないが。
ずっと「彼」は現れず。
奇妙な共同生活は終わった。
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