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錯覚それとも現実なのか、教室に着いてもなお残るお尻の違和感。眉を顰め口元をへの字に今にも泣きそうな表情を察したのは親友の雪乃だった。
「おはよっ。アレッ!? どうしたの? 浮かない顔して」
安心出来るその声を耳に思わず心愛は雪乃の胸元に飛び込むと、子供の様にメソメソと泣き始める。
「よしよしっ」
雪乃は手慣れた様子で軽く頭を撫でるとギュッと彼女の身体を抱きしめる。
「例のイケメン男子に女でもいたかっ。いいのよ、いいのっ、恋敗れ去りし時は思いっ切り泣きなっ」
バスケ部所属、体育会系の雪乃が気持ちを察し投げかけた言葉を否定するかのように心愛は何度も首を振る。
「違うのっ。もうっ!」
そう言葉を放ちながら身体を放した心愛の頬はまるで怒ったフグの様に膨らみを帯びていた。
「何よ? 泣いたり、怒ったり」
「男は男だけど、フラれてないもんっ」
心愛は懸命にまだ名前すら知らない恋心を抱く男性との決別を否定する。
「じゃ、何っ? スカートでもめくられた?」
「……」
雪乃の言葉を耳に心愛の表情は呆然と一点を見つめながら硬直する。
「えっ……、嘘っ――」
「めくられてないけど……、触られた」
「えええっ! 痴漢!!!」
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