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「あたし、あきらめないから。」  女の子が、沙都(さと)を前にキッパリ。  あたしは人の色恋沙汰に出くわすのが得意なのか、ことに沙都(さと)のそういう場面をよく目の当たりにしてるような気がする。  ここに立ち止まったままでも仕方ないけど、二人の前に姿を現すのも…  公園の街灯は電球が切れかかってるのか、少しだけ薄暗い。  あたしは、その薄暗さに助けられて二人からは見えないらしい。 「あの…」 「わかってる。朝霧(あさぎり)くんは二階堂(にかいどう)さんのこと…ずっと想ってるのよね。でも、あたしだって朝霧(あさぎり)くんのことずっと想ってる。」 「……」 「あたし後悔したくないから。」 「…でも、僕は君を好きになれない。」  沙都(さと)が、低い声でつぶやいた。  …結構ハッキリ言うなあ… 「それでもいい。あたし、朝霧(あさぎり)くんのことずっと見てる。」  女の子はそれだけ言うと、あたしとは反対方向に向かって走って行った。 「……」  小さくため息をついた沙都(さと)が、ゆっくり振り返って。 「うわっ…く、紅美(くみ)ちゃん…いつから?」  あたしに気付いた。 「いや…いつって、今よ。」 「……何か聞いた?」 「何かって?」 「……」  あたしはあえて知らない顔。  沙都(さと)はバツの悪そうな顔のまま、あたしに並んで歩き始めた。  朝霧(あさぎり)くん。  二階堂(にかいどう)さん。  そんな言い方をした…って事は…さっきの女の子、桜花(おうか)の女子かな。  沙都(さと)があたしにくっついて歩いてたのは、桜花では有名な話だし。  沙都(さと)の同級生だった子とか?  あ。  三年の時は、あたしも同級だったか。  留年しちゃったもんんな。  ははっ。 「…紅美(くみ)ちゃん。」 「ん?」  少しだけ沙都(さと)に目を向けると。 「デートしない?明日、オフだし。」  沙都(さと)は、作り笑顔。 「……」  後ろめたいわけだ。  さっきのことが。 「あたし、明日はノンくんとデートなんだよね~。」  髪の毛をかきあげながらそう言うと。 「えっ…ノンくん?」  沙都は驚いた声で、あたしの顔をのぞきこんだ。  そんな沙都の肩ごしに、三日月が光る。 「な…なんでノンくんとデート?」  沙都の狼狽ぶりがおかしくて、小さく笑う。 「早乙女(さおとめ)さんのギタークリニックに行くの。」  あたしの答に、沙都は少しだけ間を開けてため息をついた。 「なんだ~…」 「何、あたしとノンくんがデートって、心配?」 「いや…だって、僕とデートしてくれないのに、何でノンくんとって。」 「沙都とだってデートしてるじゃない。」 「してる?いつ?」  沙都はまるで子犬のように、あたしの周りをウロウロしながら。 「デートなんて、したことないじゃん。」  唇を尖らせた。 「やきもち妬いてんの?」  ギターを担ぎ直して問いかけると。 「…だって…」  沙都は尖った唇のまま。 「最近、ノンくんとばっか一緒だから。」  って、足元の小石を蹴飛ばした。  …可愛いなあ。  クォーターの沙都は、ハーフであるお母さんよりもハーフっぽい顔立ち。  あたしの弟の(がく)も、クォーターの父さんより…ハーフっぽい顔してる。  昔は沙都と学が二人して『半外人』なんていじめられて、沙都は泣いてたけど、学は『カッコいいだろ』って威張ってたなあ…  ははっ。  懐かしい。 「…紅美ちゃん。」 「ん?」 「…ううん、やっぱいい。」  あたしは…知らなかった。  優しい沙都が、あたしのために…  ある、面倒事を抱えているのを。

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