1人が本棚に入れています
本棚に追加
決意
やっと仲良くなれたのに。
古澤先生の顔を見れるだけで幸せなのに...。
いや、それは嘘だ。
私は古澤先生が欲しかった。
最初は容姿が好きだった。
これから出逢う人の中でここまで私の好みの人がいるだろうか。
特に黒目がちだけど鋭い瞳が好きだった。
幼さの中にも大人の色気のようなものが感じられた。
話してみると大人の男性というよりは同年代に近かった。
意地悪なところ、俺様なところ、話が意外と続くところ...コレは大人の男性だからできることかもしれないけど距離が近いところ。
全部全部好きだ。
バレンタインは色々悩みながらも高校生があげてもおかしくないくらいの、でもちょっとしたブランドのチョコをあげた。
もらい慣れてるのか、反応は薄かったけど。
日に日に膨らむ思いと近づく別れ。
本気で好きだとこんなに胸が痛いものかと初めての恋に苦しんだ。
3月13日、お昼休み前に私は限界をむかえる。
「古澤先生。」
職員室へ続く廊下で古澤先生を捕まえる。
「どうした?梅津。」
「放課後に話したいことがあるんですけど...。」
この時点で私の心臓は今にも飛び出しそうだった。
担当学年以外の生徒が先生を呼び出すなんて...。
しかも、保健体育の先生だ。
「おぅ。いいぞ。放課後第2教室でどうだ。」
意外にもあっさりしていた。
古澤先生は割と単純だ。
それに今は救われた。
「ちゃんと忘れないで来てくださいね。」
「大丈夫だって。俺が時間に遅れたことあるか?」
「...授業にいつも遅れるじゃないですか...。」
「いや、あれはだな。お前たちに準備させてるんだよ。なら、放課後な。」
そう言って颯爽と去っていく古澤先生。
あ、そうだ。
先生の後ろ姿も好きだ。
高身長のせいかいつもドアにぶつかりそうな先生は猫背気味で歩く。
その後ろ姿は誰とも違った。
放課後。
教室の外で待つこと15分。
中にいないことは確認した。
やっぱり忘れられてる?
職員室に呼びに行く?
もうここに来てから緊張で頭がどうにかなりそうなのに。
それをあざ笑うかのように振り回す古澤先生を恨めしく思っていた。
「悪い。遅れた。」
恨めしいなんてとんでもない。
かっこいい。
好き。
私の思いは溢れ出した。
最初のコメントを投稿しよう!