初めての治癒

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初めての治癒

体よりも心に負った傷は、なかなか治らないというのをやつらは知らないんです。 やつらってのは子どもを虐待する親とか、生徒に体罰する教師とか、クラスメイトをいじめるクラスメイトとかを指します。 心は見えないし体のどこにあるのかはわからない。頭にあるのか胸にあるのか、臓器じゃなくて見えないもの。 やつらは見えないものを傷つけるのが得意です。いや、やつらの目は特殊で心が見えているのかもしれない。だから上手に傷つけられるんでしょうね。 狙って狙って、ずどん。 モリで魚を突くように、けん玉を剣先に入れるように、遊び感覚でやっているんだきっと。 前置きが長くなりました、そうです、僕も心を傷つけられた被害者です。手のあかぎれやたんこぶやアザと違ってなかなか治りません。薬局に行っても薬が見つかりませんでした。まいったなぁ。 一体誰に、何をされたか口に出してしまえば、優しいあなたは胸を痛めることでしょう。傷を与えるのと一緒です。だから言いません。 僕のような被害者はやつらのように誰かを傷つけたくないからこそ、やられたことを打ち明けずに独りで抱えてしまうんでしょうね。人から遠ざかりたくなるんでしょうね。僕らの安全地帯は布団の中だけです。
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