ねこパーク

1/1
前へ
/11ページ
次へ

ねこパーク

♪にゃにゃにゃ、にゃんにゃん  にゃにゃ、にゃんにゃん  猫になれちゃう ねこパーク  本日オープンです♪ 陽気なメロディーと、ハツラツとしたお姉さんの歌声がスピーカーから流れている。 ここは、ねこパーク。 猫好きの、猫好きによる、猫好きのためのテーマパークだ。 日曜の朝。 母親と手を繋いだ女の子が、興奮した様子でねこパークの駐車場を歩いていた。 「私、今日から猫になるの」 「よかったね」 「だからもう、学校は行かないの」 「そっかあ。猫だもんね」 「うん、私は猫! にゃーお」 親子は間もなく、黒猫に扮した受付係に迎えられる。 「おはにゃんございま〜す。オープンほやほや、ねこパークへようこそ!」 受付を済ませると、女の子は猫耳カチューシャと肉球手袋(グローブ)を身につけ、ねこパークを満喫した。 アスレチックを楽しめる「アクティブねこタウン」ではしゃぎまわり、「ゴロゴロねこタウン」でハンモックやクッションに身を沈め、若者向けの映えスポットやカフェが並ぶ「文明ねこタウン」で昼食をとった。 「いっぱい遊んだね。そろそろ帰ろうか」 「やっ!」 「もう暗くなっちゃうよ」 「平気。猫は夜が好きだもん」 母親は、帰るのを渋る女の子に手を焼いていたが、携帯電話の画面を見て目を輝かせた。 「りっくん、パンケーキ焼いたんだって。『一緒に食べる?』って」 「食べる!」 「じゃあ帰ろうか」 「うん、帰る」 女の子は、我先にとねこパークを後にした。 「りっくん()行く前に、トッピング買いに行こうか」 「うん、チョコレートソース!」 「はいはい、チョコレートソースね」 親子は車に乗り込んだ。 母親は女の子の猫耳カチューシャを外そうとしたが、小さな手が抵抗する。 「猫はチョコレート食べれないんだよ〜? お耳はしまってください」 「私、文明ねこだもんっ。にゃーお」 女の子は猫の鳴き真似をしながら、丸めた手を母親の頬へ伸ばした。 母親はくすぐったそうに笑うと、女の子の頬を撫でて言った。 「じゃあ、もう少しだけね」
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加