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ねこパーク
♪にゃにゃにゃ、にゃんにゃん
にゃにゃ、にゃんにゃん
猫になれちゃう ねこパーク
本日オープンです♪
陽気なメロディーと、ハツラツとしたお姉さんの歌声がスピーカーから流れている。
ここは、ねこパーク。
猫好きの、猫好きによる、猫好きのためのテーマパークだ。
日曜の朝。
母親と手を繋いだ女の子が、興奮した様子でねこパークの駐車場を歩いていた。
「私、今日から猫になるの」
「よかったね」
「だからもう、学校は行かないの」
「そっかあ。猫だもんね」
「うん、私は猫! にゃーお」
親子は間もなく、黒猫に扮した受付係に迎えられる。
「おはにゃんございま〜す。オープンほやほや、ねこパークへようこそ!」
受付を済ませると、女の子は猫耳カチューシャと肉球手袋を身につけ、ねこパークを満喫した。
アスレチックを楽しめる「アクティブねこタウン」ではしゃぎまわり、「ゴロゴロねこタウン」でハンモックやクッションに身を沈め、若者向けの映えスポットやカフェが並ぶ「文明ねこタウン」で昼食をとった。
「いっぱい遊んだね。そろそろ帰ろうか」
「やっ!」
「もう暗くなっちゃうよ」
「平気。猫は夜が好きだもん」
母親は、帰るのを渋る女の子に手を焼いていたが、携帯電話の画面を見て目を輝かせた。
「りっくん、パンケーキ焼いたんだって。『一緒に食べる?』って」
「食べる!」
「じゃあ帰ろうか」
「うん、帰る」
女の子は、我先にとねこパークを後にした。
「りっくん家行く前に、トッピング買いに行こうか」
「うん、チョコレートソース!」
「はいはい、チョコレートソースね」
親子は車に乗り込んだ。
母親は女の子の猫耳カチューシャを外そうとしたが、小さな手が抵抗する。
「猫はチョコレート食べれないんだよ〜? お耳はしまってください」
「私、文明ねこだもんっ。にゃーお」
女の子は猫の鳴き真似をしながら、丸めた手を母親の頬へ伸ばした。
母親はくすぐったそうに笑うと、女の子の頬を撫でて言った。
「じゃあ、もう少しだけね」
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