#16

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#16

 誰かがボクの左肩を思いっきり突き飛ばした。 「わッああァァ……!!」  一瞬、何が起きたのか、わからなかった。  なんとか両手で受け身を取ったが、路面まで横倒しに吹っ飛ばされた。   「なッ、何するんだァ?」  ボクは倒れ込んだまま振り返った。 「大丈夫か。(たいら)ァ……」  なんとボクの左肩を押したのは本田正直(まさなお)だった。   「うッわァァーー!!」  目の前のボクが直前に倒れ込んだので目標を失った呪井は、そのままの勢いで突っ込んでいった。   「わァァァーー!!」  すぐ目の前はエスカレーターだった。  呪井は勢い余って階段を踏み外し、一気にエスカレーターを転げ落ちていった。  幸いなコトにエスカレーターに乗っている人はいない。 「ギャァァァァーー……」  駅前の広場に呪井の断末魔の叫び声が響いてきた。 「……」  ボクは唖然としてエスカレーターを落ちて行った呪井を確認した。  長いエスカレーターの下には、呪井がうつ伏せに倒れている。  全身が痙攣しているようだ。 「あッ!!」  見る見る内に、赤い血がアメーバのように路面を広がっていった。  通行人たちも愕然として、見下ろしている。スマホを向けて撮影している者もいた。  どうやら呪井はエスカレーターの階段を踏み外して落ちる際、手に持っていたナイフで(みずか)らの胸を刺したようだ。  誰かが、警察か救急車を呼んだのだろう。  すでに周辺は騒然となって、その中からサイレンの音が鳴り響いていた。  ☆゚.*・。゚☆゚.*・。゚☆゚
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