水に舞う

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「懐かしいなあ」 私はキッチンのテーブルでアルバムを広げていた。 引っ越し作業の途中で見つけた古いアルバムを整理していたのだ。 何百枚と挟まれた中で、初めて水族館に行った時の写真が目に留まった。 あの時、あのジンベイザメと目があった時。 あの高鳴る気持ちはついぞ忘れていたのだけれど。 写真を見ていたらあの時の感動が呼び起こされたような気がした。 「おーい、こっちの荷物は詰め終わったぞ」 リビングからひょこりと夫が顔を出した。 「お、昔の写真? これ結衣? かわいいなあ」 私の手元を覗いて彼が言う。 「うん、そう」 私の言葉に何かを感じ取ったらしい彼がトントンと私の肩を優しく叩いた。 「今度水族館、行こう。子供が生まれたら、一緒に」 私は笑って膨らんだお腹をさすり、アルバムを閉じた。
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