水に舞う

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やっとのことで館内にたどり着く。 広い屋内にはいろいろな水槽が設置されていて、その中で海の生き物たちがふよふよと漂っていた。 私はなおも浮つかない心で父母と一緒に歩き回る。 二人はしきりに 「クラゲ綺麗だね」 とか 「おっ、でっかいカニさんだ!」 などと話しかけてくるのだけれど、全然心に響かない。 ただ、こぽこぽと生き物たちが溢す息の残滓を見つめてはため息をついていた。 つまらない、楽しくない、嬉しくない。 私は時間を無駄にしている、という気持ちが強すぎて、一向に周りに関心を持てなかった。
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