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その日はあいにくの雨だった。
「結衣……機嫌直しておくれよぅ。せっかくの初めての水族館だろう?」
父の情けない声が聞こえる。
「結衣ちゃん、可愛いお魚いっぱいだから、一緒に楽しもう? ね?」
母も必死になだめすかしにかかっている。
今日は本来なら遊園地に出掛けるはずだった。
流石に土砂降りの中でいくわけにはいかないので、目的地は水族館になったのだ。
私はというと、ふん、とつっけんどんにそっぽを向いた。
――水族館なんてつまらない。遊園地が良かった。
そんなことをもやもやといつまでも思っている。
水族館なんて乗り物にも乗れないし、お化けもいないし、ただ魚が泳いでいるのを見るだけじゃないか。
それの何が楽しいというのか。
周りでは、同い年ぐらいの子供たちがキャッキャと騒いでいる。
私はそれを冷めた目で見つめながら、長蛇の列が動くのをひたすらに待っていた。
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