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被害者の罠
「今は雪で見えませんが……母家と茶室をつなぐ小道について、家政婦さんが教えてくれました。
一昨日、業者を呼んでコンクリートの舗装を一部やり直したそうなんです。
天気予報で雪が降ると言っていたので、日程をずらした方がいいと業者は渋ったらしいんですが。
家に誰もいないうちに済ませたいからと、強引に」
「なんだと?」
「しかも、この事は誰にも言うなと口止めされたそうです」
「つまり……」
「犯人は、雪が足跡を消してくれると思って現場に向かったのでしょう。
けれど本当は、被害者の仕掛けた罠を雪が覆い隠していた」
この雪が解ければ、犯人の足跡が出てきますよと部下はニヤリと笑ったが、警視はそれを叱り飛ばした。
「阿呆! そんなもん俺らと鑑識がすでに踏み荒らしてる可能性が高い!
それより今すぐ全員の靴を調べろ、コンクリートの付着しているもの、場所、それに指紋の有無!
同時に所持品検査、コンクリ混じりの泥のついた靴を隠していないか、もしくは拭き取った布など捨てられてないか!
相手が気づいて証拠隠滅をはかる前に探し出せ!」
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